この山の名まえを教えてください

    この山の名まえを教えてください

 この山の名まえを教えてください。この山は、大文字山ですか、それとも如意ヶ岳ですか。
 大文字送り火が行われるこの山は、大文字山だとかなり昔から思っていました。ところが、テレビや新聞では大文字山というよりも如意ヶ岳と報道されることが多くあります。数年前に京都市観光局のホームページを見たら、「如意ヶ岳」となっていました。また京都出身のタレントの書いた本にも、京都在住の作家の書いた本にも、京都を紹介する本にも、おおむね「如意ヶ岳」となっていました。

辞書には
 そこで、手近にある辞書で「大文字」を引いてみました。ついでに関連する「大文字山」「如意ヶ岳」も引いてみたら、次のとおりでした。すでに改訂されていたり、入力ミスなどがあれば、お許し願いたい。順不同。

○『日本国語大辞典』第二版 小学館 二〇一二年八月七日第二版発行
 大文字の火[=送火](「だいもんじのひ」とも) 昔は七月、今は八月の一六日の夜、盂蘭盆の行事として、京都の山々に点ずる送り  火の一つ。東山の一峰如意ヶ岳の西側に連なる大文字山の斜面に薪を積み並べ、火を点じて大の字の形をあらわすもの。
 大文字山 (大文字送り火が行なわれるところからいう)京都市左京区、如意ヶ岳の西側に連なる山。東山三十六峰の一つ。ふもとに銀閣寺などがある。標高四六六メートル。
 如意ヶ岳 京都市左京区にある山。東山連峰の主峰。平安時代は近江国(滋賀県)に抜ける間道が通り、三井寺の別院如意寺があった。西北部を大文字山といい、そのふもとに銀閣寺がある。如意ヶ峰。

○『国語大辞典言泉』 小学館 昭和六十一年十二月二十日第一版第一刷発行
 大文字の火 昔は七月、今は八月の一六日の夜、盂蘭盆の行事として、京都、東山の如意ヶ岳の西側の斜面に薪を積み並べ火を点じて大の字形をあらわす送り火。
 大文字山 (大文字送り火が行われるところから)京都市左京区、如意ヶ岳の西側に連なる山。
 如意ヶ岳 京都市左京区にある山。東山の主峰。昔、三井寺の別院如意寺があった。西北部を大文字山といい、ふもとに銀閣寺がある。

○『大辞泉』第二版 小学館 二〇一二年十一月七日第二版第一刷発行
 大文字の火 八月十六日(もとは陰暦七月)の夜、京都如意ヶ岳の斜面に火床で大の字を作り、これに火をつけて盆の送り火とする行事。
 大文字山 京都市左京区にある、東山連峰中の山。如意ヶ岳の西に連なり、標高四六六メートル。
 如意ヶ岳 京都市、東山北端の山。標高四七二メートル。大文字山の東隣にある。

○『総合佛教大辞典』 法藏館 一九八八年一月二十日第一版第二刷
 大文字山 京都市左京区の南東にある標高約四六六メートルの山。正しくは浄土寺山という。旧暦七月一六日(現在は八月一六日)夜に盆の聖霊送りの行事として「大」の文字に並べた薪に点火される大文字の送り火は有名。

○『広辞苑』第六版 岩波書店 二〇〇八年一月一一日第六版第一刷発行
 大文字の火 陰暦七月一六日(現在は八月一六日)の夜、京都如意ヶ岳の西の中腹で大の字の形に焚く篝火。
 大文字山 京都市左京区にある如意ヶ岳の西峰。八月一六日晩の篝火で有名。
 如意ヶ岳 京都市左京区にある山。東山三十六峰中の北部に位置し、標高四七二メートル。西は大文字山へ続き、しばしば混同される。

○『岩波国語辞典』第七版新版 岩波書店 二〇一一年十一月十八日第七版新版第一刷発行
 大文字 八月十六日(お盆の最後の日)、京都の大文字山などで、「大」の字形にたく、かがり火。

○『明鏡国語辞典』第二版 大修館書店 二〇一〇年十二月一日第二版第一刷
 大文字 八月一六日の夜、盂蘭盆の行事として、京都市左京区の如意ヶ岳の山腹に「大」の字の形に薪を並べて焚く送り火。

○『集英社国語辞典』第三版 集英社 二〇一二年一二月一九日第三版第一刷発行
 大文字 京都、大文字山の送り火。京都市左京区の如意ヶ岳(大文字山とも呼ぶ)の西側中腹で、陰暦七月十六日(現在は八月十六日)の夜、盂蘭盆の行事として、「大」の字の形にたく送り火のこと。

○『新明解国語辞典』第七版 三省堂 二〇一二年一月十日第一刷発行
 大文字の火 八月〔〓陰暦七月〕十六日の夜、京都市東山、如意岳の中腹に、大の字の形にたく、かがり火。

○『大辞林』第三版 三省堂 二〇一四年三月二〇日第三刷発行
 大文字 八月一六日の夜、京都東山の如意ヶ岳の山腹で「大」の字形に焚く送り火。
 大文字山 京都市左京区、如意ヶ岳の西に連なる山。海抜四六六メートル。大文字の火で知られる。
 如意ヶ岳 京都市左京区にある山。海抜四七二メートル。大文字山に連なる。文学作品ではしばしば大文字山と混同される。

○『三省堂国語辞典』第七版 三省堂 二〇一四年一月十日第七版発行
 大文字 京都市の如意ヶ岳〔別名、大文字山〕で、八月十六日に、「大」の字の形にたく、送り火。

○『旺文社国語辞典』第十一版 旺文社 第十一版発行二〇一三年十月十三日重版発行二〇一四年
 大文字 (「大文字山」の略)京都市郊外の如意ヶ岳の西にある山。
  八月十六日の夜、大文字山の中腹に「大」の字の形にたく送り火。

○『旺文社全訳古語辞典』 旺文社 (電子辞書)
 大文字 「大文字の火」の略。陰暦七月十六日の夜、京都東山の如意嶽(〓通称大文字山)の西の中腹に大の字形にたく送り火。

○『学研現代新国語辞典』改訂第五版 学研 二〇一二年十二月十九日改訂第五版発行
 大文字の火 八月(陰暦七月)一六日の夜京都市左京区の如意ヶ岳の斜面に薪を大の字の形に並べ、火をつけて盂蘭盆の送り火とする行事。

○『合本俳句歳時記』(第四版) (電子辞書)
 大文字 京都市で行われる盆行事の一つ。八月十六日夜、京都市東方の如意ヶ岳の山腹に焚かれる盆の送り火で、松の割木を井桁に組んで大の字を作り、夜八時に一斉に点火する。

○『日本歴史大辞典』 (電子辞書)
 大文字 京都市左京区浄土寺の如意ヶ岳西側にある大文字山で、盆の終わりの八月十六日(旧七月十六日)に焚かれる精霊の送火。

○『角川俳句大歳時記』 (電子辞書)
 大文字 八月一六日の夜、京都東山の一峰如意ヶ岳(大文字山)山腹に設けた、大の字に形どった火床に薪を積み火を点ける、お盆の送り火の一つ。

◎「大文字の火が如意ヶ岳にともる」とするもの

『国語大辞典言泉』 大文字の火 如意ヶ岳の西側の斜面
『大辞泉』第二版 大文字の火 如意ヶ岳の斜面
『広辞苑』第六版 大文字の火 如意ヶ岳の西の中腹
『新明解国語辞典』第七版 大文字の火 如意岳の中腹に
『明鏡国語辞典』第二版 大文字 如意ヶ岳の山腹に
『大辞林』第三版 大文字 如意ヶ岳の山腹で
『学研現代新国語辞典』改訂第五版 大文字の火 如意ヶ岳の斜面に
『合本俳句歳時記』(第四版) 大文字 如意ヶ岳の山腹に

◎「如意ヶ岳と大文字山が同じ山」とするもの

『集英社国語辞典』第三版 大文字 如意ヶ岳(大文字山とも呼ぶ)の西側中腹で
『三省堂国語辞典』第七版 大文字 京都市の如意ヶ岳〔別名、大文字山〕で
『旺文社全訳古語辞典』 大文字 如意嶽(〓通称大文字山)の西の中腹に
『角川俳句大歳時記』 大文字 如意ヶ岳(大文字山)山腹に

◎大文字の火が大文字山にともる

『総合佛教大辞典』 大文字山 標高約四六六メートルの山。大文字の送り火は有名。
『日本国語大辞典』第二版 大文字の火 如意ヶ岳の西側に連なる大文字山の斜面
『岩波国語辞典』第七版新版 大文字 大文字山などで
『旺文社国語辞典』第十一版 大文字 大文字山の中腹に
『日本歴史大辞典』 大文字 如意ヶ岳西側にある大文字山で

◎「大文字山と如意ヶ岳は別の山」とするもの(『大辞泉』第二版以外は大文字送り火に言及。『広辞苑』第六版は「如意ヶ岳の西峰」とあり、如意ヶ岳の一部とも受け取れる)

『大辞泉』第二版 大文字山 如意ヶ岳の西に連なり、標高四六六メートル。
『国語大辞典言泉』 大文字山 (大文字送り火が行われるところから)如意ヶ岳の西側に連なる山。
『総合佛教大辞典』 大文字山 標高約四六六メートルの山。大文字の送り火は有名。
『日本国語大辞典』第二版 大文字山 (大文字送り火が行なわれるところからいう)如意ヶ岳の西側に連なる山。標高四六六メートル。
『大辞林』第三版 大文字山 如意ヶ岳の西に連なる山。海抜四六六メートル。大文字の火で知られる。
『広辞苑』第六版 大文字山 如意ヶ岳の西峰。八月一六日晩の篝火で有名。
『旺文社国語辞典』第十一版 大文字 (「大文字山」の略)京都市郊外の如意ヶ岳の西にある山。

◎「如意ヶ岳」の項のあるもの(『国語大辞典言泉』と『日本国語大辞典』第二版は、「西北部を大文字山」と説明、「如意ヶ岳」の一部とも取れる)

『国語大辞典言泉』 如意ヶ岳 西北部を大文字山といい
『日本国語大辞典』第二版 如意ヶ岳 西北部を大文字山といい
『大辞泉』第二版 如意ヶ岳 標高四七二メートル。大文字山の東隣にある。
『広辞苑』第六版 如意ヶ岳 標高四七二メートル。西は大文字山へ続き、しばしば混同される。
『大辞林』第三版 如意ヶ岳 海抜四七二メートル。大文字山に連なる。

 各項目の関連を見てみますと、
 『国語大辞典言泉』では、「大文字の火」の項で「如意ヶ岳の西側の斜面に薪を積み並べ火を点じて大の字形をあらわす送り火」と説明しています。「大文字山」の項では「(大文字送り火が行われるところから)京都市左京区、如意ヶ岳の西側に連なる山」と、また「如意ヶ岳」の項では「西北部を大文字山」と説明しています。
 如意ヶ岳と大文字山の双方で送り火が行われるのでしょうか。如意ヶ岳の西北部が大文字山ということは、大文字山は如意ヶ岳の一部であるとも受け取れます。説明が曖昧で、如意ヶ岳と大文字山が同じか別の山かがわかりにくい。
 また大文字山と如意ヶ岳の位置関係をみると、大文字山は「如意ヶ岳の西側に連なる山」とあることから、如意ヶ岳の西に大文字山があることになり、大文字山の西の京都市内から東を見ると大文字山があって、その東に如意ヶ岳があることになります。二つの山は如意ヶ岳がすこし高いくらいで、ほぼ同じ高さの山です。ということは、大文字山は見えますが、如意ヶ岳は大文字山の陰になって、見えないことになります。
 『広辞苑』第六版では、「大文字の火」の項で「如意ヶ岳の西の中腹で大の字の形に焚く篝火」と説明しています。「大文字山」の項では「如意ヶ岳の西峰」「篝火で有名」とあり、「如意ヶ岳」の項では「西は大文字山へ続き、しばしば混同される」とあります。
 如意ヶ岳と大文字山の双方で送り火が行われるのでしょうか。それとも「如意ヶ岳の西の中腹」は「如意ヶ岳の西峰」の中腹という意味でしょうか。如意ヶ岳の西峰が大文字山ということは、大文字山は如意ヶ岳の一部であるとも受け取れます。説明が曖昧で、如意ヶ岳と大文字山が同じか別の山かがわかりにくいですが、「しばしば混同される」とあることから、同じ山ではないと思われます。
 大文字山と如意ヶ岳の位置関係は『国語大辞典言泉』と同じで、大文字山より西から見ると、如意ヶ岳は見ることができないでしょう。
 『大辞林』第三版では、「大文字」の項で「如意ヶ岳の山腹で」「焚く送り火」とあります。「大文字山」の項では「如意ヶ岳の西に連なる山」「大文字の火で知られる」とあります。
 如意ヶ岳と大文字山の双方で送り火が行われるのでしょうか。説明が曖昧です。
 これも大文字山と如意ヶ岳の位置関係は『国語大辞典言泉』と同じで、大文字山より西から見ると、如意ヶ岳は見ることができないでしょう。
 『岩波国語辞典』第七版新版では、「大文字山などで、「大」の字形にたく、かがり火」とありますが、字形は「大」だけではなく、「妙法」「舟」「鳥居」があるので、説明が不十分です。
 『集英社国語辞典』第三版では、「如意ヶ岳(大文字山とも呼ぶ)」と、『三省堂国語辞典』第七版では、「如意ヶ岳〔別名、大文字山〕」と、『旺文社全訳古語辞典』では、「如意嶽(〓通称大文字山)」と、『角川俳句大歳時記』では、「如意ヶ岳(大文字山)」とあります。
 これらは、如意ヶ岳は大文字山とも呼ぶ同一の山であるとの説明のようですが、位置も違い、標高も違うことから、まちがいではないでしょうか。大文字山が如意ヶ岳に含まれるのであれば、「如意ヶ岳の支峰大文字山」のように書くべきではないでしょうか。

大文字山と如意ヶ岳
 京都の地図を見てください。地図の左(西)は京都市街です。京都市街の東に大文字山があり、その東に如意ヶ岳があります。京都市街から東を見ると、場所にもよりますが、おおむね大文字山が見えます。その東にある如意ヶ岳は、大文字山の陰に隠れて、まず見ることはできません。
 京都に東山があります。東山三十六峰と言われています。幾つかの峰を総称して東山と呼ばれています。如意ヶ岳も東山と同じように、如意ヶ岳が主峰で、幾つかの支峰があるという説もあったようです。

あとがき
 「大文字送り火が行われる山の名まえは」と問われたら、どう答えますか。かなりの人が「如意ヶ岳」と答えるでしょう。
 「では、大文字山と如意ヶ岳は、隣り合っているが、同じ山ではありません。大文字送り火が行われる山の名まえは」と問われたら、どう答えますか。それでも「如意ヶ岳」と答える人がいるでしょう。すると、大文字送り火が行われない大文字山の隣に、大文字送り火が行われる如意ヶ岳があることになります。
 大文字山は、大文字送り火が行われるからその名が付いたと考えるのが自然で、無理はないでしょう。
 辞書とは、何かわからないものや事柄を調べるときに利用します。その内容は正しいものと思われているようです。「大文字」の項目を複数の辞書で調べた結果、辞書によってまちまちであることがわかりました。
 多くの人は、一つの辞書だけを利用していて、複数の辞書で調べることはあまりないでしょうが、ある項目を複数の辞書で調べてみると、おもしろいことが見つかることがあります。セカンドオピニオンということばがありますが、辞書についてもセカンドオピニオンが大切だと思いました。
 辞書について、「一つの辞書の中で矛盾する説明がなされていることがある。説明が曖昧で、どう理解すればよいのかわからない場合がある。多くの辞書が同じように説明していても、正しいとはかぎらない。出版社が同じでも辞書によって説明が違うものがある」等々の結論を得ました。
 辞書がすべて正しいとは言えません。その「すべて正しい」とは言えない辞書をいかに使うか、使い方が問題です。
 最後に、大文字の送り火が行われる山の名まえを教えてください。

(付録 專光寺ホームページより)
大文字は如意ヶ岳に?
 ことしも八月が来ました。十六日の夜には五山に送り火が明々と燃え上がります。この季節になると、私は先輩がいつも言っていたことを思い出します。「大文字は如意ヶ岳にともるのやない」と。
 いつのころからか、ニュースや新聞を注意して見るようになりました。けれども、大文字の送り火はどこも如意ヶ岳にともると報道しているようです。
 二〇〇〇年七月四日の京都新聞の夕刊の「現代のことば」は、財団法人豊郷病院名誉院長の友吉唯夫さんが「二〇〇〇年の送り火」という題で、「大」の字が何を意味するかについて書いています。その中でも、「五山の代表格が如意ヶ嶽の大文字だが」と書かれています。
 『東山三十六峰を歩く』という本があります。編者は京都新聞社、三浦隆夫となっています。「あとがき」によると、「取材執筆は編集局社会部の三浦隆夫編集委員が担当」とあります。一九九五年七月に第一刷が発行されています。
 その本の中に「第十一峰如意ヶ岳‐大の火文字で精霊送る」という題で如意ヶ岳を取り上げています。その冒頭には、
  お盆の十六日夜、東山の如意ヶ岳・大文字に火が灯る。
と書かれています。そして、
   如意ヶ岳・大文字山と並べて表現される。しかし、本当の如意ヶ岳は京都側からは全く見えない。四六六メートルの大文字山頂上でさえ京都市内からは見えにくい。如意ヶ岳はさらに東、大津市寄りにあり、標高四七二メートルだ。
  「大文字山 如意ヶ岳西の山。京都市左京区南部。八月十六日の送り火で知られる。四六六メートル。
  如意ヶ岳 京都市左京区。滋賀県境近くにあるが別称如意山、如意ヶ峰。高さ四七六メートル。大文字山とひと続きの山。文学作品ではしばしば混同される」
   コンサイス日本地名辞典の解説だ。岩波の広辞苑は「大文字山は京都市左京区にある如意ヶ岳の西峰。如意ヶ岳は京都市左京区にある山。東山三十六峰中の北部に位し、海抜四七二メートル。西は大文字山へ続きしばしば混同される」と出ている。
   京都の山に詳しい京都市交通局勤務の大槻雅弘さんは「国土地理院の二万五千分の一地図には池谷地蔵あたりに如意ヶ岳、四七二メートルとある。ここは琵琶湖寄りで京都からは全く見えない。いろいろな書物には大文字山は如意ヶ岳の一支峰のように書いてあるが実際、登ってみると峰は複雑で途中に谷があり大文字山が如意ヶ岳の一支峰とは考えにくい」と言う。
と述べられています。ここでは如意ヶ岳と大文字山とは別の山であることが述べられています。如意ヶ岳は京都市街からはまったく見えないことも明らかです。
 続いて、
   地元の人でも如意ヶ岳と大文字山は同じものという人がいる。最初は如意ヶ岳だったが大文字の送り火が有名になってから大文字山と呼ぶようになったともいう。いずれにしても東山三十六峰の主峰である如意ヶ岳は京都市民にとって大文字の火床の背後にそびえる高い山なのだ。
とあります。
 この文章の前半は、大文字山と如意ヶ岳は同じ山であり、大文字山というのは俗称であるといっていて、見解が分かれていることが述べられています。後半の文章は、曖昧な文章になっているため、意味が取りにくいのですが、そのあとに「地図の上では京都から全く見えないが」と続いているところを見ると、大文字の火床のある山と如意ヶ岳とは地図の上では異なった山だと述べていることになります。
 そして、この本の「あとがき」には「送り火の大文字がある如意ヶ岳」と書かれてあります。
 この本の筆者は、如意ヶ岳と大文字山とは違う山で、大文字山は如意ヶ岳の一支峰とも考えにくい。また地図のうえでは明らかに別の山だと言っているように思います。そしておもしろいことに、「あとがき」では京都新聞社取締役編集局長が、大文字は如意ヶ岳にともると書いているのです。
 以上のことは、なにを意味しているのでしょうか。
 またことしも八月十六日が来ます。そして雨天でなければ、京都の五山に送り火がたかれるでしょう。そしてマスコミはこぞって「如意ヶ岳に大文字の送り火」と報道するのでしょうか。